学会3 

ところで、当学会の資金難は、
自慢ではないがほとんど破滅的な状態である。
億単位の資金投下があった頃の蓄えをすべて吐き出し、
赤字が累積するようになってきて、
ついに今年の春、寄付を募ることとなった。
なんとかおかげさまで累積赤字を減らしたが、
問題がこうなる前に、生き残りをかけて、
「先生、何かいい智慧はないですか」と、私すらも問われたときがある。
事務局のある研究所まで出向き、よくよく話を聞いてみると、
経費削減の努力はすでに極限まで行き着いており、
この際はどなたか、篤志家を探す他ないという話だった。
ちなみに、当学会の顧問には、政界のお歴々が名を連ねられ……

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学会2

今回も「長野で学会」と言ったところ、
「いいですねぇ、長野のリゾートホテルで学会ですか」
と言われた方がいた。
かつて医学系の学会に出ていたころ、
製薬会社丸抱え、とまではいわないが、
分不相応に豪勢なものであったのに驚いたことがある。
医局の担当者は、
各製薬会社からそれぞれ協賛金を集め、
今回、あそこは何本、ここは何本と、
指の数で示していた。そして、
何本しか出さないここはなにか勘違いしてるんじゃないの、
甘いわよ、と彼女が言ったとき、
この世界とはそう長く縁を持てそうもないと感じたものであるが……

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学会

学会で、長野に行った。
「気」のエネルギーなど、現代科学では解明されていない現象について、
科学的に探求しようという学会のうち、
常に英文で論文集を発行し続け、国際的にも認知されている、
おそらく本邦唯一の学会で、国際生命情報科学会という。
驚くことに、かつて文部省や科学技術庁から、
億単位でこうした研究のために資金が出された時期があった。
おかげで当時、当学会はそれなりの研究業績を挙げることができ、
さあこれから新しい科学の世紀……と思っていた矢先、
財政支出の削減が始まった。
そのため、地方の公共事業は削られ、健康保険を持たない人が現れ、
格差社会になった、といわれるが……

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記録5

私の両親はすっかり放任だったので、
子供の頃、漫然と無為に過ごした。
それが小学校のある時期から、
何でも目標なしで行なうということが嫌いになった。
自己流でやるのも好きではなくて、
可能なら何でも習いたがるようになった。
そのくせ、もの覚えが速いほうではなく、
というよりも、はっきり言って遅く、
いつも苦労した。
数年前、引っ越した隣がたまたまスポーツクラブだったが、
入る決心をするのに1年半かかった。
どうせ頻繁には行けないし、
それにも係わらず、
また何か目標をもってやり始めようとするのが怖かった。
案の定、100メートル個人メドレーをやってみると、
最初は2分半〜3分もかかって、
愕然としたのである。
それをなんとか2分までもってくることができたのも、
読者の皆さんのお蔭です……といわれても困ると思うが、
最近のタイムがだいたい2分15秒前後だったので、
これでも自分としては驚異的だ。
今回の人生で現実に役に立つことはないだろうが、
何回か生まれ変わるうちには、何かの局面で役に立つかもしれない。
それにしても申し訳ないのは……

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記録4

最後の25メートルに入ったとき、
私はすでに疲れ切っていた。
あと25なのに、それが遠い。
クロールを泳ぐ姿勢が、
まるでのたうっているかのようなのが分かる。
肩も、腕も上がっていない。
しかし、たとえこれで極限まで疲れても、
あとは帰って瞑想すれば回復する。
体を動かした後の瞑想は普段よりも深く入るので、
それはそれで楽しみだし、皆さんにもお勧めだ。
とにかく、最後の25を必死で泳ぐ。
が、しかし……時間は無情に過ぎていく。
1秒、2秒、3秒……と、
通常よりも時間がかかっているのが体感される。
それでも最後数メートルは息継ぎなしで泳ぎきり、
肺が爆発するかと思ったが、
時計を見る。
と、秒針は……

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記録3

平泳ぎは時間がかかるが、一般に日本人のもっとも得意とする種目だ。
おそらく、偏平な日本人の体型にあっているのだろう。
長時間泳ぐのに適しているが、スピードも出にくい。
他の3種目に比べ、スタミナのロスは少ないが、
ここで時間を失うと、記録更新は覚束ない。
……と思いつつ、50をターンしたのだが、
すでに私は疲れていた。
もともと最初に、もう少し呼吸を調えてから入るべきだった。
しかし、もし反対側にいた女性にコースに入って来られたら、
今日の試みはその時点でついえていたので、それは仕方なかった。
あるいは、ここ数日の間にもう少し炭水化物をとっておくとかすれば、
少しは違ったか……。
しかしそんなことを言っても仕方がない。
ここは疲れても、なんとか泳ぎきるしかない。
二本目はもう無理なので、この一本目にかけるしかない。
そう思って必死で水をかくと……

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記録2

われわれのような素人にとって、
4種目のうちもっとも難しいのはバタフライである。
この最初の種目をどの程度の時間で泳ぎ、
かつ体力を消耗しないでいられるかが、記録更新のための最大のポイントだ。
タイムのことを考えると、スタートした後、
なるべく長く水中にいたほうがよい。
水面を泳ぐより、水中をキックで進むほうが速いのだ。
しかしそれが長すぎると、今度は体力を消耗する。
私は、普段よりは長く水中でキックを繰り返し、
しかし、息が切れる前に浮上した。
水中の時間は、今までで最長だ。
水面でのバタフライに移ったところ、
手に、水の抵抗がしっかり感じられる。
水のひっかかりがいいようだ。
普段よりも少ないストロークで、25メートルを泳げたことが感覚的に分かる。
続いて背泳ぎ。
これも、水中でのバサロが長いほうがタイム的にはよいが……

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記録

記録を更新するには今日しかないと、私は思った。
そのためにはまず、お腹が重いときは無理である。
睡眠不足は慢性的にそうだが、あまりひどいときはだめだ。
さらに、体が固くなりやすい秋・冬場の到来を避けたかった。
まだ残暑の残る間に更新したい。
そして、大事な条件の一つは、
コースを一人で使えることだ。
コースに人が他にいると、その人を避けるようにして泳がなければならず、
特にバタフライがやりにくくなる。
また、常にコースの右側を泳ぐので、距離的なロスが出る。
今日、最初見たときには最速レーンに人がいたが、
シャワーを浴びている間に、上手い具合にいなくなってくれていた。
チャンスだと、私は思った。
しかし、下の階から駆け上がってきたので、まず息を調えたい。
ところが、そうしている間に……

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宗研39

最近は、学校以外にいろいろな習い事をするのが普通のようで、
子供たちはすこぶる忙しい日々を送っていると聞く。
楽器に親しむことができたり、スポーツができたら、
それらは一生の財産になるに違いないが、
我が家はまったくの放任だったので、
小学校5年生まで、私は放課後の時間のすべてを遊び惚けていた。
あの膨大な時間を有効活用できていたら……と思わないでもないが、
過去を取り戻すことは残念ながらできない。
こんなことを思いながら死ぬであろう私は、
今度生まれてきたら何か習い事をすることになるかもしれない。
しかしそうやって膨大な時間を無駄に過ごしてきた私も……

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宗研38

『信心生活の入門』について書いたところ、
早速、その本を読みたいというお便りを読者の方からいただいた。
ちょうど洗礼式のために四谷に出たので、
カトリック出版の老舗・中央出版社(今のサンパウロ)に行ってみた。
フランスコ・サレジオの『信心生活の入門』と言うと、
店員さんは即、理解してくれた。
その様子に、私はある種の満足感を覚えたが、
ところが彼女は済まなそうにこう付け加えた。
「あれ、今ないんですよ
 うち(サンパウロ)から出てる本なんですけど……」
再版の予定もないといわれるのでがっかりしたが、
世の中、そうしたものかもしれない。
それほどいいとは思えない本がベストセラーになることもあれば、
歴史を経て読み継がれてきた名著が刷られなくなることもある。
店員の女性は、この本には今でも引き合いがたまにあるのだが、
とりあえずどうにもならないと言った。
ところで、どこまでも格調高い『信心生活……』のなかでは奇妙にみえる一節、
「ダンスをしてはならない」をたまたま引用したが……

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