宗研36


『信心生活の入門』の内容は多岐に渡っていて一言で紹介できないが、
印象的な金言の一つは、
「誠実に、かつ巧みになされた仕事が遅すぎるということはない」
というものだった。
私は、子供の頃から、本を読むのが遅かった。
何かを記憶するのも、何をマスターするのも遅かった。
そのことをいつも苦にしていた私にとって、
聖人の言葉は救いであった。
人と比較して遅いということはあるかもしれない。
早すぎる締め切りに間に合わなくなることもあるかもしれない。
しかし、誠実に仕事をするなら、
そして持てる力を発揮して巧みに行なうなら、
それで遅いということはないのだと聖人は言う。
カトリックの聖人による叡智の込められた同書だが……


中には現代に生きるわれわれには理解しにくいものもある。
「ダンスを行なってはならない」
というのは、その一つかもしれない。
おそらく、読者の皆さんはその意味がお分かりにならないであろう。
すなわち、聖人が言いたいのは、
異性とダンスを行なえば、さらに大きな刺激が欲しくなるだろう。
だから、もともとダンスを行なうべきではない、というのである。
最近のニュースによれば、
日本の中学校では、武道とダンスは男女両方に必修になるという。
それを知れば、聖人はどう思われるだろうか。
とにかく、当時の私はこうしたことも含め、
すべてを聖なる教えと思い崇め、
将来は神父になることばかり考えていた。
まことに人は、自分のことなどちゃんとは理解できないものである。


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