祈り 1


大晦日、K-1ダイナマイト。これまで数々の名選手による伝説の試合が重ねられてきた、格闘界の最高峰である。その舞台で「ピーター・アーツ」とやらないかと言われて、ハイ、やります、と答えられる格闘家が何人いるだろうか。
ピーター・アーツ。身長192センチ、体重112キロ。過去、K-1グランプリで三度優勝し、ミスターK-1とも呼ばれる。
この男とやれば、通常は勝てない。5万人の観衆の前で、あるいはテレビで全国放映される試合で負けて、年末・年始を鬱々として過ごすよりは、普通の格闘家は試合を受けない方を選ぶ。もし、大山峻護君がどこかに所属している格闘家だったら、やはり所属ジムはこれを受けなかったかもしれない。
だが、彼は二つ返事でこれを受けた。彼はもともと、ピーター・アーツとやりたかったのだ。


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