国連宗教者会議 2


 タイ人の親切は有名である。会場に到着すると、無数の男女の小学生たちが各国の旗を振って沿道を埋め、目を合わせるとお辞儀をしてくれる。そして「ニーハオ!」中国人だと思われているらしい。しばらくして日本人と分かり、「コニチワ」。各国の挨拶をすべて覚えているのか……。
 それにしても困った。風邪がこじれ、声がほとんど出なくなってきている。二日目の午前にはスピーチをしなければならないのだ。どうしようと思っていたとき、アメリカインディアンの先住民代表がスピーチに立った。
「私は、今回、皆さん全員のために三つの贈り物を用意しました。それは祈りと儀式を通じてなされるもので、一つは白い布を使って目の浄化を行ないます。もう一つは鳥の羽を使って耳の浄化、そして水を使って喉の浄化を行ないます」
 彼によれば、翌日の日の出とともに、この儀式の効力が現われ、われわれの目と耳と喉が浄化されるのだという。
 多分に政治的で、ときに自己顕示欲すら感じさせる宗教界の大御所らのスピーチのなかで、この方のそれは素朴で力強かった。しかしもちろん、明日、僕の声が出るのかどうかはまったく予断を許さない。


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