第十三回 〜二千年の聖都への大巡礼 サンティアゴ・デ・コンポステーラ〜 七日目-4


長い聖母マリアご出現の歴史のなかで、ひときわ輝く二大聖地、ルルドとファティマ。そのうち、ルルドで聖母を見たベルナデッタは、死後、百数十年も遺体が腐敗をまぬがれ、今も巡礼者たちの篤い拝礼を受けている。
一方、ファティマで聖母を見たルチアは、聖母の預言どおり長く地上に留まり、昨年2月に亡くなった。
間違いなく、この女性に関する列福・列聖の調査が始まるはずである。そうしておそらく、彼女が「聖女ルチア」として、聖女ベルナデッタと並び称される日が、遠からず来るに違いない。そのとき、このロザリオを手にしている者がどれほどそれを誇らしく思うか、想像できない。
(聖母の慈しみ以外のなにものでもない……)
そう思いながらバスに乗ると、下江さんが言った。
「先生、Qさんが、……バスでファティマに向かわれたそうです」
「……」
下江添乗員は興奮していた。26年間、添乗してきて、こんなことは初めてだし、仲間の添乗員の間でも聞いたことがないという。
「奇跡としか言いようがないですね」
そう言って彼は、驚きの表情を、彼らしくひょうきんに表現してみせた。
これを「奇跡」と言うのかどうか、私は知らない。が、ともかくも、彼女が念願のファティマ巡礼ができるようになったことは事実だ。バスのなかでもう一連、われわれは聖母に感謝のロザリオを捧げた。


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