運気 9


遂に、この瞬間が来てしまった……。
首を決められた瞬間、私はそう思っていた。これが怖かったのだ。
グレイシーに完全に決められれば、もう誰も抜け出すことはできない。あるいは、これまでのように一回りも二回りも相手が大きかったとき、いかに技術に勝る者でも抜け出すことはできなかったかもしれない。
だが、今日の相手は同じクラスで、大山君もまた、かつてよりもさらに修練を積んでいた。一旦は首を決められたものの、素早く抜け出し、ふたたび攻勢に転じた。上から攻め、離れては倒し、ふたたび上から攻め、そうして最終ラウンドが終わった。
亀田戦のようなことがなければ、誰が見ても大山君の勝ちだ。そう思っても、判定までの時間が長い。
結局、判定は2対0。が、ドローの判定をしたジャッジも一人いた。それほど、やはり実力は伯仲していた。
やむを得ない。相手はグレイシー一族のなかでも完成され、かつ最も凶暴といわれた男だったのだ。


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