勝負 5


出血量が多く、ドクターはこれ以上の試合続行を認めなかった。が、負けた気にならない。
大山君自身は格闘家として、決着をつけたかったに違いない。実際、出血以外にダメージはなかったし、最後にグラウンドに持ち込んだとき、血まみれになりながら、そのまま逆に関節をへし折れたかもしれないのだ。
が、彼は二度も網膜剥離をやっている。悔しいが、将来のことを考えれば、ドクターが止めたことを責めることもできない。
それにしても、勝負の世界の厳しさというものを、あらためて教えてくれた試合だった。
かたや柔道を基本とする寝業で、かたや打撃で、究極まで技を磨き抜いた人間二人が戦ったとき、どちらが本当に強いのか。
いずれにしても、勝敗はほんのわずかな“何か”で決まる。そのさまを、古人は単純に「勝負は時の運」と表現した。力が離れた者についてすら、勝負には時の運が関係する。まして実力の伯仲した者同士の勝敗は、実際、「運」や「流れ」で決まる。


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