ジョージ・フェルナンデス


 インドから、衝撃的なニュースが飛び込んできた。武器購入の際の汚職事件にからんで、ジョージ・フェルナンデス国防大臣が辞任したというのである。
 国防省の役人や政治家が、兵器選定にまつわる賄賂を武器商人から受け取る。それは世界中で、日々行なわれていることだ。昨今明らかになりつつある機密費流用疑惑から類推するまでもなく、わが国も例外ではないだろう。まして、あのワイロ大国インドでそうだったとしても、少しもおかしくはない。
 しかしそれでもこのニュースが私にインパクトを与えたのは、他ならぬ、国防大臣の人柄による。ここ数年、インドをふたたび訪ねるようになって以来、私がインドに行ったときも、彼が日本に来たときも、われわれは必ず会っていた。敬虔なクリスチャンでもあるこの人は、会って言葉を交わす度、温かみを増す。聖母出現を題材にした『最後の奇跡』が出来たときには、「あなたがこれを英訳するのと、私が日本語をマスターして読むのと、どちらが先ですかな」などと、彼は冗談を言った。利害関係がなかったからかもしれないが、彼はいつも、気のいい叔父さんか友だちのようだった。つい十日ほど前に会ったときも、その感を深めて別れたばかりだったのだ。
 今回の汚職は、いまのところ側近によるものとされ、その詳細については明らかにされていない。直接の関与がないことを願うが、かりに関与していたとしても、この親しみの気持ちが変わることはないだろう。
 政治や経済の巨大なうねりは、人を特異な状況にさらす。あの特殊な場においては、その人本来の人間性よりも、根底に避け難く横たわる欲望が引きずり出される。富や権力の中枢にいて、ただただ清廉でいることなど、多分、普通の人間にはできないことなのだと、私はつくづく思ってしまうのだ。


カテゴリー: ヴェーダ パーマリンク

コメントを残す