山形への旅 4


 式の前日、メールが届いた。
「明日、山形は大雪だそうです。新幹線は着きますでしょうか。どうか、お祈りください」
 東京から山形までは、三時間弱かかる。午前中の式に出席するには、自宅を朝6時ころ出なければならない。かりに、何かの加減で目覚まし時計が鳴らなければ、式には間に合わない。5分……という電話に30分つきあっても、アウトである。が、それは許されない。すでに、式の間に唱えられる「共同祈願」の一つを、僕は請け負ってしまっていたのだ。
 本当は福島の友人宅に前泊する予定だった。ところがこの人は、直前に口腔外科手術を受け、それどころではなくなってしまっていた。では、山形に前泊すればよかったか……。しかしそれは、スケジュール的に無理だった。
 彼は、「お祈りください」と書いてきた。しかし、新幹線が遅れたり止まったりすることを、心の力でどうこうできるのか。ユリ・ゲラーならともかく……。
 この人のように信心深くはない僕は、出発前に祈らなかった。新幹線に遅れそうだったのだ。


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