イルカ 1


 イルカさんのコンサートに行った。芸能生活30周年……と銘打っているのに、彼女は相変わらずの若さだった。
 始まって30分、いくつかの歌に続いて懐かしい曲が始まった。
『汽車を待つ君の横でぼくは 時計を気にしてる 季節はずれの雪が降ってる……』
 これが流行った頃、僕はこの歌を知らなかった。高校二年の冬、クラスの友だちが口ずさむのを聞いて知ったのだ。
 歌には、歌そのものの内容よりも、それを聞いた頃の記憶が染みついている。
「汽車がトンネルを抜けると、そこはまっ白な針葉樹の林で……、あああ〜〜哀しいのぉ〜」 
こう言っていた溝本君、今頃どうしているだろうか。優しい獣医さんになったと聞いたが……。


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