因果8


高校時代、最後の夏の甲子園で頭に死球を当てられた水野は、
プロ入り後、最後まで才能を開花させることなく引退していったが、
当てたほうの桑田は巨人のエースへと登り詰めていった。
が、江川同様、彼には終始、悪役のイメージがつきまとった。
さらに、バブル期には不動産投機に巻き込まれ、
すべての財産を失ってしまう。
ドラフトで悪役になった二人の天才投手は、奇しくも、
バブル期の投機により同じように“破産”することとなった。
ちなみに、江川が今日、日本テレビ系列にしか登場しないのは、
読売グループが、いわば破産管財人になったからだ。
同じ理由で、桑田も大リーガーになる夢はおろか、
FA権の行使すら諦めざるを得なかったが、
ここ数年は巨人においても登板の機会は与えられず、
日本の球界を事実上引退した。
……が、そのことが逆に……


彼の大リーグへの夢をかなえることとなったことを見ると、
人間、何が幸いするか本当に分からない。
巨人で少しでも出番があれば、彼は今だに日本で投げていただろう。
年俸数百万円の身で渡米し、途中不運な怪我もしたが、これを克服、
ついに大リーグで初めての登板を終えたとき、
かつての大巨人軍のエースは、
「こんなにいいことがあっていいのかと疑いたくなるくらい嬉しい……」
と、何度も口にした。


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