因果4


「密約」で思い出される大投手といえば、
やはり江川と桑田であろう。
若い皆さんはあまりご存じないかもしれないが、
江川の才能はまさに「天才」としかいいようのないものだった。
が、どうしても巨人に入りたいと思った彼は、
そのためにプロとしての出だしをしくじってしまう。
前の年のドラフト会議で一位指名された江川については、
指名をしたクラウンライターが単独で交渉権を保有していた。
その年のドラフト会議の「前々日」までは。
そして、ドラフト会議「前日」は、
野球協約上、どこの球団にも単独の交渉権はなかった。
つまり法的には、どこの球団にも交渉権があったことになる。
この、いわゆる“空白の一日”、江川は巨人と契約を交わした。
会議前日の夕方……


当時は国電と言っていた今のJR渋谷駅を歩いていたら、
夕刊紙に『巨人、電撃の江川獲り!』と巨大な見出しが踊っていたのを思い出す。
江川がどうなるのか、希望どおり巨人に入れるのかどうかを、
野球好きな国民の多くが固唾を呑んで見守っていたこの時期、
私も、翌日のドラフト会議に関心を寄せていたので、
この見出しを見たときの驚きは忘れられない。
スポーツの得意な18歳の若者を巡って、
これから事態がどのように発展していくかなど、
このときはまだ、誰にも予測できなかったに違いない。


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