天才 3


予め電話で受賞拒否を通告されていた国際数学者会議会長は、自らロシアを訪問、ペレルマンの自宅で2日間に渡って説得したという。だが天才の気持ちは変わらなかった。
「私の証明が正しければ、賞は必要ありません」
ペレルマンはそう言ったという。われわれ凡人としては、生涯、一度でいいから言ってみたい言葉だ。さらに、
「私は数学界から引退しました。もうプロの数学者ではありません」
「有名でなかった頃は何を言っても大丈夫だったが、有名になると何も言えなくなってしまう。だから数学を離れざるをえなかった」
などと述べた。実際は、このような奇行が彼をさらに有名にし、数学史上、忘れられない存在にしてしまったのであるが……。
新聞やテレビの報道によれば、現在ペレルマンは無職で、サンクトペテルブルク郊外で母親と生活しているという。わずかな貯金と数学教師をしていた母親の年金にたより、授賞式が開かれるマドリードに行く費用もない。
もちろん、その気にさえなれば、1億1600万円の賞金を手にすることができるのだが、彼にはそうした関心が全くない。22日の発表当日も、キノコ狩りで多忙であったと伝えられる。


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