結婚式 10


お嬢さんが音楽家と結婚することになったとYさんが明かしてくれたのは、
父の供養のため、ホームレスの皆さんにお弁当を配りに行こうとする車中であった。
われわれ自身が夕食をとる時間がなく、
余分に買っておいた弁当を、車中で貪り食べていたときである。
驚いた私は箸を止め、しばらく黙ってしまった。

私の周りの、まだ誰も知らない情報であることは明らかだった。
なので、私も誰にも言わなかった。
著名人の場合、噂が先走ると、そこに奇妙な力学が働き、
結婚でも何でも、ボツになってしまうことがあるからだ。
そのような例を、われわれは、特に芸能界において目にすることがある。

それにしても私が嬉しかったのは、
相手の方が立派な音楽家であったことよりも、
その方の人柄がよく、まことに好青年なのだという彼の話だった。
えりかちゃん、さすがにいい人を見つけた。
が、それはやはり、父親のおかげでもあるように思えるのは、私のひいき目か。
Yさんが、彼女に何を特別教育したわけでもないだろう。
ただ、彼がこれまでに行なってきた、弱い人びとや、社会への多大な貢献に対し、
神々が、あるいは自然界が、こうして恩返しをするのではなかろうか。
苦しみを和らげてもらった人たちの感謝の念が、
彼だけでなく、その家族にも否応なく及ぶのではないか。

どんな出会いもそうであるように……

馴れ初めの過程を聞けば、大いに偶然が作用したわけだし、
もちろん本人も、さまざまな努力をしてきただろう。
しかし究極的には何かの功徳や恩寵が返ってきたようにしか、私には思えなかった。
そうした功徳はまた、子々孫々に至るまで引き継がれていくに違いない。
その意味でも、この報せは喜ばしいだけではなく、
ことの他、腑に落ちるものだった。


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結婚式 10 への2件のフィードバック

  1. イスカーナヤマト のコメント:

    ということは、クサンチッペと私の結婚も何かの功徳や恩寵??・・・・・

  2. SHO のコメント:

    現実には、いい人同士の結婚ではあっても、それがうまくいくとは限らない・・・

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