聖母 2


本のなかで書いたことがあるが、修学旅行のバスのなかで、クラスの誰かに普段は聞けないことを聞きましょう、というコーナーがあった。私に対するそれは、「理想の女性は??」というものだった。
それに対し、答えは自然に口をついて出た。『マリア様のような方です……』
この答えに、悪ガキどもは大いに沸き立ったが、ふと見ると、斜め前方に座っておられた大木神父も、苦笑を隠しきれない様子だった。
そんなマリア様に向かう旅を、私が何度もすることになるとは、当時は誰も思わなかったに違いない。
私は東大に行くかもしれない。しかしそれと同じくらいの確率で修道院に入るかもしれないと思われていたのだから。
実際、高校を出て、すぐに修道院に入る可能性が私にはあった。大学を出てそうする可能性もあった。社会に出てからそうする可能性もあったし、未だにそうしたいと思うことがある。


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