聖夜 3


 ネパールの大木神父はますます元気にしておられる。ただし、マオイストの活動が相変わらず激しいため、神父のやりたいことがそのままできないということが悩みの種である。
 そんな神父から久しぶりに来た便りには、嬉しいことが書かれていた。子供の頃から神父が見ていたヨセフィーナという女の子が、このたび高校を優秀な成績で卒業し、首都カトマンズにある聖ザビエル大学の理学部に合格したというのである。
 ただし、学費も生活費も、家庭にはない。おそらく今までは、神父が個人的に面倒を見てきたものと思われる。そこで、首都カトマンズで三年間、イエズス会の経営する大学に通い、生活していくための資金を援助させていただくこととなった。
 かつて佐々木幸枝さんに寄せられ、インドの孤児院や寺院、病人や知的障害者の家などのために使わせていただいてきたお金が、ちょうどそれくらい残っていた。そこで、これを「佐々木幸枝記念・聖マリア奨学金」と勝手に命名させてもらい、大木神父とサプナ・ヨセフィーナに贈ることとした。これに対し、ヨセフィーナは、毎日ロザリオを聖母マリアに捧げ、佐々木幸枝と日本の人たちのために祈ってくれているはずである。
 ところで、拙著『アガスティアの葉』をお読みいただいた方は、かつてポカラで、ガンで亡くなっていくタクシードライバーに神父が洗礼を授けるシーンがあったのを覚えておられるだろうか。ドライバーが亡くなった後、私がその家を訪ねると、冷たいせんべい布団の上に眠る少女たちがいた(『アガスティアの葉』146頁、文庫版153頁)。実は、奨学金を贈った後で、その一人がこのヨセフィーナであることが分かったのだが、そのときの私の驚きを読者の皆さんは想像していただけるだろうか。
 そしてまた、あのタクシードライバーの家族のことを、『アガスティアの葉』を読んだ佐々木幸枝がいたく気にしていたのを思い出すとき、これは単なる偶然ではなく、彼女自身がやっていることだと、私にはどうしても思えるのである。


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