愛煙家 7


 電話で、多くを話すことはできなかった。だが、声を聞けただけでも少し安心し た。
 現代医学には、むろんさまざまな欠点がある。これを運用する医師にも、病院にも、不足な点は多いにある。患者を道連れにしながら、自ら先頭切って地獄に向かっているような医者が、実際にいるものだ。しかしだからと言って、医学のすべてが否定されるわけではない。そういう奴は、世の中のあらゆる職業にいるのだから。
 だから今は、現代医療の長所を上手に享受しながら体力を蓄え、反転攻勢の機会を待つしかない。腫瘍が小さくなって免疫力もあがれば、さまざまな次の手が考えられるのだ。
 治れば、彼はまたあっけらかんとしてタバコを吸うかもしれない。いや、そうに違 いない。                                     だが、今はとにかくよくなって、早く帰ってきてもらうしかない。それを、ぼくは聖母マリアや、ぼくの知るあらゆる神々に願っている。そうして、このエッセーを読むたくさんの方の清らかな心が、意識的にでも無意識的にでも、それぞれの周囲で病気に苦しむ人たちの回復に味方することを願い、彼の回復にも味方してくれることを願っている。


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