愛煙家 1


 常々、タバコの煙にいい思いをしていない。
 臭い、というレベルの話ではない。敏感な人は、副流煙によりアレルギー性鼻炎を誘発する。頭痛がする。気持ちが悪くなる。風邪をひきやすくなる。愛煙家は、自分が食事を終えると美味そうにタバコを吸うが、周りはせっかくの食事がまずくなる。味覚は、常に嗅覚と共同で働いているからだ。風邪で鼻がつまると食べ物の味がしなくなるのは、その理由による。
 そんなの、ちっとも気にならない、という人もいる。が、そういうタフな人でも、実は副流煙によって刻々と健康は損なわれている。副流煙が、主流煙に比べて数倍から数十倍、ものによっては百数十倍の発ガン物質を含むことは、単純な測定で得られる事実である。
 愛煙家の多くは、タバコが自分の健康だけではなく、他人の健康をも損ない、不快感を与えているという事実を、実は知っている。が、それを認めたくはない。自分が長年にわたって他人に迷惑をかけているという事実を、誰がすすんで認めたいだろう。
 それでも、ぼくは知っている。多くのタバコ吸いが、他人の前では平気でタバコを吸うのに、自分の子供の前では注意深く喫煙を避けるのを。


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