山形への旅 1


 このところ毎年行っているルルドに、「Petition」という箱がある。それは、何も知らない、愚鈍と言われた少女ベルナデッタが聖母マリアを目撃し、後に奇跡の水の湧き出る泉を掻き出した、まさに歴史的な場所に置かれている。Petitionは、嘆願、または嘆願書とでも訳せるだろうか。
 われわれの心の願いを、聖母はいつもご存じであるに違いない。しかし、まさに聖母が現われたその場所に手紙をお出しして聞いていただくのも、すこぶる人間的でいいと思い、手紙をお持ちしますとこの欄で書いたのだった(6月22日)。
 わずかな期間に、たくさんの手紙が届いた。それらを、僕は間違わないよう一カ所に集めておき、一つの袋に入れてルルドに持って行った。
 初日、成田からパリ、ポーを経由してルルドに着いたのは夜中だった。聖域は夜間は立ち入ることができないので、手紙は翌日、この箱に入れた。すべての手紙を入れたとき、僕は旅の目的の三分の一を達したかのような喜びを感じたのだった。


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