私の系譜 11


父はもともと、生来の世話好きであったのだと思うが、
自分で何かを楽しむという概念に乏しく、
これもよくあるように、いくつもの仕事や世話役を掛け持ちしていたので、
私の知る限り「休日」という概念もなかった。
子供の頃、正月元旦を一日、家族で過ごしたことがあった。
お雑煮をいただき、テレビを観、カード・ゲームをし、相撲をとったりして、
それが本当に楽しかったものだから、
翌日も同じことが続いてくれればと私は期待した。
が、それが浅はかな願いだと知るのに、長い時間はかからなかった。
私は、「お願いだから、もう一日……」と、口に出して言った。
が、父はほとんど無言で、それを却下した。
何やら苦しそうな“言い訳”を、少しだけしたかもしれない。
しかしそれはもちろん、私には理解できない内容のものだった。
以後、今日に至るまで……


私は二度と、同じようなことを父にお願いすることはなかった。
その後、父とどこかに遊びに行ったとか、旅行に行ったとかいう記憶も、
ほとんどない。
それどころか、今度は自分自身が、
“休日”という概念を失くしていくようになっていった。


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