アダムの肋骨12


突然何かが起こるという可能性は棄てきれないものの、
なんとか、外宮、内宮の参拝が終わっていった。
そのうち、私には、
胸の骨が折れているときでも、車の上下動のような不連続なものでなく、
スムーズな動きであれば、なんとか普通にできるらしいことが分かってきた。
ただ、思わず車のドアを閉めようとしたり、
加重はまったくかからなくても、
横や斜めの動きを突然とったりしたときなどに痛みが走ることが、
徐々に理解されてきた。
膝の出血のほうも止まってくれていた。
黒い、フリースのようなズボンをはいていたので、
血液をうまく吸収してくれたようだ。
帰ったら即、消毒しなければならないだろうが、
しかし半日程度ならこのままでも大丈夫だろう。
ただ、一歩いっぽ脚を踏み出す度、
膝関節にゴクン、ゴクンという妙な感触があって、気持ちが悪い。
しばらく忘れていると、膝関節から下がダランと力の入らない状態になっているので、
いつも注意していなければならなかった。
普段、体内に油分が足りないから、このようなときに関節の脆弱さが露顕する。
しかしそれでも、われわれは聖者の指定どおり花と儀式を捧げ、瞑想をし、
そうして最後には月読みの宮まで参拝して、帰路に就くことができた。
帰りの近鉄特急に乗り、スムーズな走行に入ると……


私はいつの間にか、中学生が椅子に浅く腰掛けてダランとしたときのような、
だらしない姿勢になってしまっていた。
そうして束の間、緊張感から解放されると、目を閉じ、
心から伊勢の神々に感謝した。


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