アダムの肋骨10 


伊勢市駅では、そのTさんご夫妻と、
車を出してくれた現地の会員さんが、半ばにこやかに、半ば心配そうに迎えてくれた。
「大丈夫でしたか?」と問われ、
私は思わず「いや、その……」と口ごもってしまった。
すぐに気を取り直し、「大丈夫です!」と言う。
それにしても、現地の会員さんが車を用意してくれていたのは、幸運だった。
おかげで、車や、途中の道筋の段取りを心配しなくて済む。
とにかく、ここはなんとか普通に、巡礼を終えなくてはならない。
案外と、Tさんと私で歩くスピードが同じくらいになって、
ちょうどよいかもしれない……。
そんなことを勝手に想像していたが、実際は違っていた。
Tさんは、私のいかなる想定も上回るほどにお元気で、
神宮の境内を矍鑠(かくしゃく)として歩かれたのだった。
まれに、プージャの席などで拝見するときとの違いに私は驚き、
つい、私もつられて普通に歩きだす。
何の力だったのかは分からない。
やはりそれが、伊勢神宮のような聖なる土地の力なのか。
過日、四国を一日歩いたとき……


ずっと続いていた微熱がすっかりよくなってしまったような力が、
やはりこのような聖地にはあるのだろうか。


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