愛煙家 5


 そんなぼくの固い“決意”を揺るがす事件が、最近起きた。常々敬愛していた、ある知人がガンだという。咽頭ガンは、タバコとの関係性が肺ガン以上にストレートであることが知られている。喫煙者が咽頭ガンになる確率は、非喫煙者の数十倍も高い。
 この人と、上のような議論をしなかったわけではない。聡明な頭脳をもったこの人は、口ではなんと言おうと、やはりタバコの害を知っていたのである。だが彼は、これを減らそうとはしなかった。
 そういう人に同情はしない、というぼくの決意は、最初から崩れてしまっていた。決意していたことすら忘れて、あちこち電話をかけまくった。
 彼は、手術や化学療法のような生臭い現代医療は決して受けないと決めていた。放射線も嫌だという。もちろん、それらの方法はとらずに済めばそれに越したことはなく、代替療法だけで回復していく可能性もゼロではない。……が、普通はそうならない。過去の不摂生のほうがあまりに膨大で、それを簡単には帳消しにできないからだ。
 しかしとにかく、今は本人の納得する方法で、免疫力をなるべく損なうことなく、最善の方法を探し出さなければならない。


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