愛煙家 6


 何人か知り合いの医師に連絡をとった。特にガンと免疫学、および代替医療の専門家に。そうしてとりあえず、放射線治療を受けるよう説得する方法を考えだし、段取りまでしたところで、知人から連絡があった。容体の変化が予想よりも速く、明後日、入院するというものだった。
 入院前に、もう一度会っておきたかった。というのも、化学療法と放射線、および免疫療法に関する認識で、すり合わせておきたいことがあったからだ。入院を前日に控え、ぼくは彼の自宅に電話をした。10分でもいいから、会って話したかった。ところが、電話が通じない。携帯も、電源が切られたままだ。
 ここから彼の自宅までは、1時間以上かかる。このまま電話がつながるのを待っていては、日が暮れる。そう思ったぼくは、咄嗟にコートを着て、うちを出る準備をした。そうして、今、まさに出ようとしたとき、電話が鳴った。入院は、聞いていたよりも一日早まっていた。その直前に、彼が連絡してくれたのだった。


カテゴリー: 医学・科学 パーマリンク

コメントを残す