先輩 6


「16期の青山圭秀さんではないですか?」
後ろから突然、そう呼びかけてくる人が出席者のなかにいた。
「17期の秋光です」
寮の一学年下に、秋光というよくできる男がいて、東大法学部に進学したのを私も覚えていた。今回の判決を下した杉原則彦裁判長とも彼は同室だったことがあり、したがって彼らは中・高・大と先輩・後輩になったことになる。
秋光君とは大学時代に一度だけ、東京の街中で会ったことがある。当時私は松濤に住んでいて、彼は渋谷から東大駒場に歩いて通学していてばったり会ったのだ。「こうやって歩いて、体力を落とさないようにしています」と言ったのが印象的だった。
そうしたこともあって、彼は当時スリムだったのだが、今や恰幅がいい。体だけでなく、表情にも貫祿がある。
しかし、それもそのはずだ。計算してみれば、あれからもう30年近くが経っているのだ。


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