運気 1


あまり気持ちのいいとはいえない話題を連載している間に、8月5日、有明コロシアムでHERO’Sライトへビー級トーナメントが行なわれた。
準々決勝の舞台には、あまたいる格闘家のなかから、大山峻護君がノミネートされていた。
すでに何度かこのエッセーでも取り上げさせていただいたように、柔道家から総合格闘家に転身し、彼の歩んできた路は決して平坦なものではない。
一度ならず、二度までも網膜剥離に苦しみ、試合中、ギブアップしないで腕を骨折し、さらにはミドル級とヘビー級のちょうど中間の体重のため、ほとんどいつも自分より一回り、二回り大きな選手と対戦させられた(2005年3月26日、9月10日、11月8日、2006年 1月1日、3月16日)。
だが、誰もが嫌がる相手とも、彼は逃げずに戦ってきた。そうして、グレイシー一族の雄ヘンゾ・グレイシーを破り、K-1の王者ピーター・アーツを破り、今回の舞台に立つこととなった。
この日の相手は、ホドリゴ・グレイシー。王国を誇るグレイシー一族のなかでも完成された格闘家として知られている。
過去、このホドリゴを倒そうとして何人かの日本人が立ち向かっていったが、いずれも歯が立たなかった。負けた彼らも決して弱くはなかっただけに、正直いって私は、この日を心安らかに迎えたとはいえなかった


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