沖縄の青年


 話は前後するが、今回の旅には同行者が一人いて、彼は出発の前々日、沖縄のある男性に会いたいと言い出した。
 この沖縄の男性は、ある時期から土方仕事をして生計を立てながら沖縄の小学校に花の種を配って回った。すさんだ少年たちの心に、ささやかな花を咲かせてほしいという一念からだったという。その後、極貧の生活を続けながら日本国中と世界中で祈りの旅をして回った。
 この人については、名前も住所も知られていない。ただ、彼について書かれた本を、私は以前、ある出版社の社長からいただいていた。
 出発の前日、私はこの出版社に電話をかけ続けた。が、終日、応答はなかった。会社はすでに倒産していたのだ。
 さらに何人かの知人に当たり、沖縄の男性のことを知っていそうな人を一人だけ見つけ出した。だが、その人も仕事で海外に行っているという。
 二日目、思わぬことで滞在を延長していた頃、なんとこの人から携帯に電話が入っていた。


カテゴリー: 世界 パーマリンク

コメントを残す