学会 2


世界保健機関(WHO)後援の学会を寝過ごしそうになった私も、講演自体はお手の物……のはずであった。
が、20分だと思っていた講演時間は、当日の朝、15分と訂正され、座長による演者紹介の際には10分とアナウンスされて度肝を抜かれた。
内容的には、普通に話せば少なくとも2時間はかかる、現代科学と東洋哲学の話だったので、これを10分でまとめるのは至難の業であったが、講演後のディスカッションを長くとるためであると説明された。
こんなときに使う一つの手は、本来なら具体例を挙げながら説明する概念も、専門用語で言い切ってしまうことだ。
たとえば、「指数関数的膨張」と「永久インフレーション」、「アインシュタインの局所性」と「実在の不可分性」を具体的に説明すればそれなりに時間がかかるが、それを前提知識であるかのように言い切る。……ということで、なんとか講演を終え、その後の質問にも答えた私は、この日の仕事のすべてを終えたと信じていた。


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