葬儀 1


今から27年前、パウロ6世という偉大な法王が亡くなられた。不眠症に苦しみ、謹厳な顔つきで、あまり一般に親しまれた方ではなかったが、しかしまぎれもなく、この法王は偉大であった。
その前のヨハネ23世と、このパウロ6世の名にあやかって、この後に選出された方はヨハネ・パウロ1世を名乗られた。
そして、わずか33日の在位で亡くなったヨハネ・パウロ1世の名にあやかり、今回亡くなった法王はヨハネ・パウロ2世を名乗ったのだった。(最近、日本のマスコミ関係者や政治家のなかに、何とこの名前を省略してパウロ2世と呼ぶ人がいて驚愕した。ジョージ・ブッシュを省略してブッシュと言ってもよいが、パウロ2世という名の法王は、歴史上、別にいる。)
パウロ6世が亡くなったとき、私は日本での葬儀に参列した。
場所は東京大司教座・聖マリア大聖堂。東京に出て来て2年目で、右も左も分からぬ頃だった。
着いたときにはすでに“立ち見”状態で、2時間以上の葬儀を立って参列かと思っていたとき、関係者がやってきて、われわれを前方に導いた。たくさんの招待席が、空席のまま残っていたのだ。
するとすぐに、全員の起立を促す声がした。追悼ミサの始まりではない。皇太子殿下が到着されたのだった。(昭和)天皇の名代として来た皇太子は、最前列席の前に設けられた席に着かれた。私の位置からわずか数メートルの場所に、今の天皇がいた。


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