誓い 1


 友人のTがマザー・テレサの修道会(Missionaries of Charity)に入って、はや4年が経つ(『祈りの言葉』75ページ)。その間にTが重ねたであろう苦労は、言葉で言い表すことができない。慣れないイタリア語での修道生活。厳しい戒律と、貧しい生活。誰一人、知らない人びと。おそらくは自分より年下の先輩による、厳しい訓練の日々……。
 一度、読者の皆さんとローマを訪れたとき、一人で修道院に向ったことがある。そこは昔来たことがあったのに、ひっそりした修道院を見つけるのに苦労した。中に入れてもらうのに苦労し、そうしてTの教育係という人と、やっと内線で話すことができた。
「元気なんですか?」
「元気ですよ」
「イタリア語には、慣れましたか?」
「もう少しですね」
「日本のお菓子を、置いていってもいいですか?」
「結構ですよ」
 機械的な調子の会話は、じきに間を保てなくなり、終わった。
 私は、名刺に短いメッセージを書いて、お菓子の包装紙に忍ばせた。
『われわれのことを思い出したら、お祈りください。日本では、みんなで祈っています』


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