愛煙家 2


 アメリカにいたとき、ほとんどすべての公共の場所が禁煙であることに感動した。ところが、日本に帰るなり、その快適さは失われた。親切心に富み、他人を思いやることが何より美徳と考えられる日本で。
 あるとき、レストランのオーナーが自らすすんで客の前でタバコを吸い始め、料理にまで煙を吹きつけるので、少しの間やめてもらえないかとお願いしたことがある。相手を怒らせないよう、最大限に丁寧に言ったつもりだったが、オーナーは即座に顔いろを変え、言った。
「おまえみたいな奴は、うちで食ってくれなくていい!」
 ぼくは静かに席を立ち、レストランを後にした。そのときは、悪態の一つもついてやればよかったと後悔したが、今にして思えばその必要もなかった。このレストランは、ほどなくして潰れたのだった。
 こういう経験の一つもすると、多くの人はタバコ吸いに対して何も言うことができなくなる。もともと嫌な思いをしているのに、さらに嫌な思いをさせられるくらいなら黙っていようと、多くの日本人は思う。
 タバコが、本人だけでなく周囲の人の健康を損ない、不快感を与えると言っても、「でも、タバコを吸って長生きする人もいるじゃないか!」と言われるのが、この国では関の山だ。そうした風土のために、日本は先進諸国に比べて、いまだにタバコは野放し状態といえる。 


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