聖者の世界 2


 旅の参加者は、必ずしも全員がピオ神父に詳しいわけではない。そこで僕が調べようと思い立ったのだが、調べれば調べるほど、キリスト教世界にもこれほどの聖者がいたかという感を新たにする。
 神父を有名にしてしまったのは、なんと言ってもその「聖痕」である。彼は三十を過ぎた頃、両手、両足、脇腹に、ちょうど磔になったイエスと同じような傷を受け、以後、生涯の終わりまで血を流し続けた。その傷は化膿することも感染症にかかることもなかったが、いかなる方法によっても治癒させることができず、新鮮な血液を流し続けた。
 これを検査した多くの医師のなかには、掌の傷が表から裏に貫通しているのを確かめた者もいる。そうして神父は、常に、この傷による激痛にさいなまれ続けたのだった。


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