アフリカ大陸の朝 2


修道院には、一応PC部屋があって、当初はまったく機能していなかった。
私もあまり口にはしていなかったと思うのだが、困っているのがやはり伝わったのであろう、
長身のがりがりにやせたヨーロッパ人司祭が登場して、復旧に努めてくれた。
だが、今も、どんなときにネットが繋がり、どんなときにそうではないのか、
その法則性は杳としてつかめない。
つまり、まったく偶然に左右されるようだ。
その上、がりがりのヨーロッパ人司祭によれば、ネットは一度に一人しか使えない。
そんなことがありうるのかと思うが、とにかくそう言うのだ。
そういうわけで、今日は朝3時に起きて来てみたら、
やはりネットが使えるのが嬉しいのか、別のヨーロッパ人司祭がすでに来て使っていた。
彼らはフランス語しか話さず、英語はからっきしだめなので、ヨーロッパ人ということしか分からない。
実はもう一つ、このPC部屋には秘密がある。
それは、蚊取り線香を焚いても焚いても、蚊が刺してくることだ。
日本から持参した蚊避けスプレーなど、ものの役には立たない。
蚊取り線香の煙がもうもうと立ちこめているのに、そのなかを蚊や、蛾が悠然と乱舞する。
こうして手足を掻き掻き書くのはよいが、
そのうちに、それらの蚊の中にはある一定の確率でハマダラ蚊がいるであろうから、
その場合はマラリアに罹患するだろう。
救援に来るはずのハラによれば、ぽっくり死んでくれるのはよいが、
遭難したり、重病にかかったりするのは費用がかさむので、勘弁してほしいとのことだ。
また、同じ死ぬにしても、アフリカで腐敗し始めるのは困る。
そうして最後に弟子に迷惑をかけていくかどうかによってセンセイの真価が決まるとハラはいうのだが、
私は生涯を通じてほとんどアルコールを口にしていないし、
アフリカで死ねばやはり腐敗くらいはするだろう。
おちおちマラリアにもなれない、今日この頃であるが…


そうこうするうち、今日も鳥たちの可憐な歌声が始まった。
聖者のような老司祭が杖をつきながら聖堂に向って行き、
こうしてふたたび、アフリカ大陸に朝がくる。


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