ラクシュミ 4


 それにしても、ラクシュミのまぶたはきれいに切れていた。誰も触らないのにどのようにしてこんなところが……。ありそうにない傷を見ながら、僕は一つのことを思い出していた。
 小学校の頃、僕はまぶたを切ったことがあった。五年生の春の運動会、棒上旗奪いの練習のとき、友だちのひじが当たったのだ。が、切れたのは、二重まぶたの間。なんと、右の二重まぶたの間がスパッと切れたのだ。(おかげで、僕のまぶたは三重になった!)そのとき、傷を見た大人たちは、これでよく眼がつぶれなかったと不思議がった。両親も、学校の先生たちも。
 ふたたび、ラクシュミ女神をよく見てみた。ちょうど同じ位置が切れている。
 ……彼女が昔、僕を守ってくれたとでもいうのか。一年間プッタパルティで僕を待ってくれて、そのことを教えてくれたのか。むろん、真相など分かろうはずもないことだが。


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