追想4


宮澤喜一が政治家に向いていたか、いなかったかといえば、
およそ向いていなかった、と言うしかない。
特に権力闘争にはからっきし興味がなく、
実際、いつも闘いには負けていた。
英字新聞を読み、
欧米のエスタブリッシュメントらと気楽に英語で話すその姿は……


土建屋やヤクザ出身の政治ゴロたちに好かれようはずもなかった。
いろいろな偶然も働いて、
総理大臣の位まで昇り詰めはしたものの、
しかし魑魅魍魎の跋扈する政治の世界で、
自分の本当にやりたいように政治を動かすことはできなかった。
晩年、自らが大蔵大臣、財務大臣として行なわざるを得なかった
多大な財政出動を自ら評して、
「まるで汚泥にコンクリートパイルを打ち込むようだった」
と追想されたとき、一瞬だけ見せられた寂しげな表情が、
私にはいまだに忘れられない。


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