津波 3


そもそも、仮設住宅で話を聞き始めた時点で、一人の男がどこからともなくやって来て、「帰れ!」と怒鳴り始めたのだった。「お前ら外国人は、興味本位にやって来ては、俺たちを傷つけていく」と言うのである。
そういう男に対して、仮設住宅の住民は、逆に一致して「帰れ! 帰れ!」の大合唱である。要するに、これから何かしてもらえそうな仮設の住民に対して、幸いにも家が流されなかった村人が焼き餅を焼いているのだ。
そうかと思うと、われわれの姿を目敏く見つけて近づいてきた別の男がいた。妻を津波で亡くしたことが新聞に出ているのだという。その新聞のコピーを渡し、彼はさかんに窮状を訴える。通訳に聞くと、見舞金が欲しいのだという。
それは、たしかに惨状だった。かつては互いに協調して生きてきたであろう村人たちは、今やより大きく災害でやられた者とそうでない者とに別れた。
そうした中では、依然、助け合いながら生きていこうという心と、同時に、他人に出し抜かれたくないという嫉妬心とがせめぎ合う。
050624

仮設住宅の少女


カテゴリー: チャリティ, 世界 パーマリンク

コメントを残す