麻薬  1


 「先生のご専門は、麻薬でしたよね」
 昔、そんなことを言われたことがある。私の専門の一つは「麻酔」であるが、麻酔薬と麻薬とは少し違う。
 麻薬とは、「麻酔作用を持つ物質のうち、依存性を有するため、法律上、取り締まりの対象となるもの」であると、国語辞典には載っている。この定義に従えば、依存性を有し、法律上取り締まられているものでも、麻酔作用を持たないものは麻薬ではない。その意味で、「覚醒剤」は麻薬ではない。が、人体に対するその有害性から、覚醒剤は覚醒剤取締法という法律で、麻薬とは別に取り締まられている。
  昨日もまた、本来才能豊かであったはずの芸能人が一人、覚醒剤所持で逮捕されていた。初犯でなく、執行猶予期間中であったので、今度はおそらく5年程度の実刑 だろうという。マスコミは、彼を簡単に批判する。たしかに彼は、非難されるべきだ。が、何かが依存性や耽溺性を持つとは、本来こういうことなのである。


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