誇り 3


 期待に胸膨らませ、インド洋を眼下に見降ろす部屋に入って見たもの。それは延々と中継される「中国対ニュージーランド」(だったか……)の女子ホッケーの試合であった。失礼ながら、これを見てインド人は満足するのか? そうではない。インド人の出場する種目が、ほとんどないのだ。というより、彼らはもともとオリンピックに興味がない。旅の間中、登場してくるインド人のなかに、オリンピックに興味を示した者はただの一人もいなかった。彼らにとっては、それよりも、地方のクリケット試合の結果が気になるらしい。
 それでもこのとき、ホテルでは一つの祝賀会を計画されていた。
「われわれは、インド人であることを誇ろうではないか!」
 そのような見出しで始まる祝賀会のチラシには、数日前、男子ダブルトラップ射撃で銀メダルをとったラジャワルダン選手の名前が記されている。だが、ここは彼の地元ではない。ホテルが彼のスポンサーなのでもない。われらがインド人がメダルをとった!というのが、祝賀会の理由なのだ。ちなみに、現時点に至っても、インド人のメダリストはこの男一人である。


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