武士道 4


 決勝は、天才的な技のキレを見せる松本に対し、大西が驚異的な気迫で押した。しかし速射砲のように繰り出す大西の突きも蹴りも、すべて松本は見切り、試合は互角のまま延長に。延長でも甲乙つけ難く、再延長、そうして再々延長にもつれ込んだ。実に、二分間の延長を繰り返すこと4度。しかし4度目には、審判はそれぞれどちらかに挙げなければならない。
 それまでのどの試合も、どんなに接戦でも、どちらが勝ったかは私のような素人にも分かった。が、この試合だけは、どちらが勝ったか分からなかった。私には、わずかに、天才・松本の技の華麗さとキレが、大西の闘志と手数に勝ったように見えた。が、となりにいたプロデューサー氏は、大西のパワー空手の勝利を確信していた。そうして実際、副審二人の判定も、割れたのだった。
 観衆全員の目が、主審の長谷川一之師範の目に注がれた。長谷川氏自身、実は第一回の全日本空手道選手権大会の覇者である。師範は、副審の一人が赤、一人が白であることを告げ、そうして一瞬の、微妙な間をおいてから、勝者・白を告げた。館全体がどよめき、史上初の三連覇をなし遂げた天才・松本は、天を仰いで泣いた。
040418-5

大西選手(背)の蹴りを紙一重でかわす松本選手


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