山形への旅 6


 結婚の司式は、イエズス・マリアの聖心会のピアス・ムレン神父。滋味溢れる笑顔と端正としかいいようのない日本語が、式の趣をますます高めた。いい、ますますいい……。
 しかし言っておくが、カトリック教会で行なわれる結婚式が、すべてこうなるわけではない。まことに味気ない、砂を噛むようなミサを行なう司祭も大勢いる。やはり今日の新郎新婦は、聖母に護られているのか……。
 式は進んで、互いを夫婦とする誓い。「順境のときも、逆境のときも、健康なときも病気のときも、互いに愛しあい、忠実を守り……」
 それから指輪を交換し、新郎は新婦のヴェールをあげた。そうして(まさか……)の思いをよそに、その唇に口づけた。
 僕は気を失い、倒れそうになるのを何とか踏ん張って、和服姿で列席の親族らを見やった。純正日本人のこの人たちにとって、おそらく初めて見る、人前でのキスではなかろうか。しかもそれは自分の子であり、孫であり、甥や姪なのだ……。
021110

二人を結びつけたマリア様
(山形カトリック教会)


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