ガネーシャ神と聖母マリア 3


 果して、四時のバジャンには間に合うのか? 
 そう思っていろいろ逆算し、この時間には家を出ようとしたそのとき、電話があった。
「ちょっと、五分だけいい?」
 電話の主は、敬虔なカトリック信者のK氏。篤い聖母信心で知られ、特にマリア様について話だそうものなら決して五分では終わらない。しかしこの日、彼は普段にもましておごそかな調子で話し始めた。
「実は奇跡があって……」
 彼によると、昨日、さる徳の高い神父様が東京においでになったので、ミサにあずかったのだという。ミサのクライマックスである聖変化のとき、司祭は薄いウェハースのパンを高々と掲げ、これをイエスの体に変える(とカトリックでは信じられている:『最後の奇跡』87ページ)。
 このとき、白いパンのなかに金色の光が現われた。その光は、さまざまに形を変えてしばらく留まった。見たのは自分だけではなかった。自分自身は半信半疑でいたところ、ミサが終わってから、少なくとも4人の人が、その光が聖母マリアの形になったと、控えめに、しかし確信をもって話し出したというのである。
「それ、いつ頃のことなの?」
 僕は、何日くらい前のことかを知りたいと思った。すると、彼の答えは、「三時半から四時の間」。
「日付けとしては?」
「昨日です。昨日の、三時半から四時くらい」
 それはちょうど、聖天様の前でマリア様に想いを馳せていた時間である。そのとき、東京の東と西で、聖母がわれわれに同時に心をかけてくださったのだろうか……。そんなことを、僕は勝手に思ったのだった。


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