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青山圭秀エッセイ  バックナンバー

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最新号 (第140号 2020年12月4日配信)

『とき』

ご承知のように、この欄ではなるべく政治の話題を控えるようにしているが、
世界にはどうしても触りたくなるような、そんな魅力的キャラが時折登場する。
政治の、というよりも、人間性の話題として少しだけ触れてみると……

四年に一度のアメリカ大統領選挙。世の中には現時点でまだ、
トランプ大統領が逆転するかもしれないと言う人がいるらしくただただ驚かされるが、
ここでは前回のことを思い出してみたい。
あのとき、共和党の大統領候補がトランプ氏に決まった瞬間、
誰もが民主党ヒラリー・クリントン候補の“楽勝”と考えた。
実際、ヒラリー陣営自身、勝利を確信、美酒を酌み交わしたといわれる。
しかし結果は、そうならなかった。

遡ること13年前、夫であるビル・クリントンの不倫疑惑のことを、
ヒラリーは著書のなかでこう書いている。
『その日の朝、夫に初めて真実を打ち明けられたとき、思わぬ内容に私は泣いた——』
が、しかし彼女は、もちろん夫の性癖を長年にわたって知り尽くしていた。
「ルインスキー事件」のときも、ほぼ最初の段階から事態を把握していただろう。
それでも、夫を信じ、耐え、許す妻を演じ、夫の退任後は今度は自分が大統領職につく。
そんな戦略がいつも見え隠れしていた彼女は、才能に満ちあふれ、
自分でも懸命に頑張ったのだろうが、そこそこの時を経て有権者には見透かされていく。
結果、彼女がどれほど国民に嫌われてしまったかといえば、
それは、「あのトランプ氏を相手に勝てないほど」だったといえる。

その後、大統領に就任したトランプ氏。
もし新型コロナウイルスがなければ、彼は今回の選挙も勝っていただろう。あるいは、
ファイザーやモデルナのワクチン開発成功のニュースがもう一週間早く出ていても、
結果は違っていたかもしれない。だがこちらも、そうはならなかった。
大統領職にあった4年間、ことある毎、世界を驚愕させてきた彼だったが、
旧来の政治家にない本音を語るこの男が理屈抜きで好きだという人が、
米国民のなかにかなりの割合でいたことも事実である。
実際、人気があり、人格者でもあったオバマ前大統領は、
結果として8年の長きにわたり中国も北朝鮮も野放しにしてきたが、
それらをある程度牽制したのはトランプ氏の功績といえるかもしれない。

それでも再選が許されなかった理由は、「とき」の巨大な力としか言いようがない。
その力は、中国に新型コロナウイルスを造らせ、流出させ、
対応を誤った現職アメリカ大統領の野望を打ち砕いた。
どれほど、彼がときに見放されていたか。
それは、「あのバイデン氏に勝てないほど」だった。

世界は、こうしてときに「スター」を生む。
ときに輝き、ときに可笑しく、ときに驚愕させられる彼らであるが、
いずれにしても相対界のゆらぎがいつくしみ、生み出し、
そして記憶の彼方に消し去っていくヒーローやヒロインたちだ。

生まれるに時があり、死ぬに時がある。
殺すに時があり、癒すに時がある。
壊すに時があり、建てるに時がある。
泣くに時があり、笑うに時がある。
嘆くに時があり、踊るに時がある。
保つに時があり、捨てるに時がある。
黙るに時があり、語るに時がある。
愛するに時があり、憎むに時がある。
戦争に時があり、和睦に時がある……
わたしは知っている。
神はすべてを、時宜にかなったものとして美しく造られた。
神のみ業は永遠に変わらず、
これに何かをつけ加えることも、減らすことも、誰にもできない——。

太古の時代、現在のユダヤ地方に生まれた賢人コヘレトの言葉である。