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青山圭秀エッセイ  バックナンバー

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最新号 (第135号 2020年6月18日配信)

『驚愕』

子供の頃からわれわれは、地球は球体をしているのだと教わってきた。
実際に自分の目で直接見たわけではないが、それが事実だと思い、
宇宙から撮られてきた地球の映像を、まるで自分の目で見たもののように信じている。
だが、仮に今、そのすべてが捏造で、
実際は地球は平らだという“事実”が明らかになったとしよう。
にわかには信じられなくとも、
動かぬ証拠の数々が揃ってそれを認めざるを得なくなったとしたなら、
われわれはどんなに驚くだろう。
実際、今でもアメリカには「地球は平たい協会」というものがあり、
相当数のアメリカ人がこれを信じているといわれる。

仮に、死んでみたら実際は何もなくて、死がすべての終りだったとしよう。
死後の世界はもちろん、生まれ変わりもない。
そうなってみたらどんなに驚くか知れないが、
そのときはそのこと自体にも気づかないだろう。

科学的な気温の観測は、19世紀に始まった。
それによると、1906年から2005年の100年間に、世界の平均気温は0.75℃上昇している。
20世紀中盤、上昇のペースが鈍った時期があったが、後半に入ってふたたび加速、
2015年から4年間の気温は観測史上最高で、
単年の記録上位20傑は、過去22年間に集中している。
その原因として、太陽放射の変化のような自然要因も考え得るものの、
人間による化石燃料の使用と、それに伴う温室効果ガスの増大が主な要因とされる。
過去、さまざまな議論・研究があったが、
現在、これを否定する国際的な学術団体は存在しない。

もしこれが間違いであったとなれば、やはり大いに驚愕することとなるが、
さらに驚くべきは、こうして迫っている危機に対して、
われわれが特に何の関心も持つことなく、普通に過ごしているという事実だ。
一旦放出された二酸化炭素は100年間は温室効果ガスとして蓄積され続けるので、
現在のような経済活動が続いた場合、気温の上昇はさらに加速していく。
そして、前回エッセイに書いたように、
産業革命以降の気温上昇が2℃を超えると、もはや後戻り不可能な状態に陥るが、
それまでのタイム・リミットは、もしかしたらあと10年程度かもしれないという試算もある。

地球人口は、この100年間で4倍強に膨れ上がった。
50年間で、航空機や車による移動は50倍超、世界のGDPは60倍超、
貿易量に至っては100倍を超えた。
これらすべての繁栄を享受してきたのはわれわれ自身であるが、
それは数億年かけて蓄積されてきた化石燃料を堀り、一斉に燃やした結果である。
そしてそのためには、平均気温が加速度的に増加してもやむを得ない、
今、生活の利便と安楽を享受するのだ、というのが今日の世界の大勢である。

このままいけば、近い将来、かなりの確率で、というよりも確実に、
太平洋に浮かぶ美しい島国ツバルは海中に姿を消すだろう。
ヴェネツィアの歴史的建造物や、東京や大阪、名古屋の海抜の低い地域も例外ではない。
そのような事態が起きてからなんとかしようと思っても、もはやどうすることもできない。
10年か20年前ならばなんとかなったかもしれないし、
はるかにコストも安く済んだにもかかわらず、なぜ何もしなかったのか、
自分たちの愚かさにあらためて驚愕することとなるだろうが、
そのときはもう遅いのである。